「内向型の生き方戦略」から見えた外向型へのアドバイスの罠

「内向型の生き方戦略」から見えた外向型へのアドバイスの罠

前回読書感想文をかいた中村あやえもん氏の「内向型の生き方戦略」。これを読んだ中で僕の考えが強まった部分がありまして、今回は今の世の中の疑問点を語っていこうと思います。

前回書いた読書感想

「内向型の生き方戦略」を読んでわかったこと

外向型と内向型とでは根本が違う

まず前回のまとめ。世の中には2種類の人間がいます。俺か俺以外かではなく、「外向型」か「内向型」かです。

  • 「外向型」は世の中の約8割、人付き合いが得意で、周囲に合わせて行動できるストレスにも強いタイプ。
  • 「内向型」は約2割の少数派、人付き合いが苦手、独自の世界を持っていて、外部ストレスに弱いタイプ。

これを本著ではかなりわかりやすく解説されていて、この2つの性格は生まれつき根本が違うということになります。正確に言えば、人によって外向的な面が何割とか、レベルの違いがあるでしょうが、大きくはこの2種に別れます。そして、学校や社会は大勢を占める外向型のために作られており、残り2割の内向型には生きづらい作りになっています。

本著はそんな生きづらい「内向型」に向けた、自分らしく生きる方法を記してあります。しかしながら、僕としてはこの本はぜひ外向型の人にも読んで欲しい内容だと感じました。なぜなら、世の中は情報化社会になって、この「内向型」へのアドバイスが、外向型にも影響を与え始めていると思うからです。

世界を変えた偉人達の言葉は「内向型」の意見がほとんど

最近ではこんなアドバイスをネットなどでよく目にしませんか?

「みんなと同じことはするな」

「夢中になれる事を探そう」

「好きなことを仕事にしなければ大成しない」

3つ目にいたっては、「好きなことは仕事にしない」という正反対の意見までありますけどね。まあしかし、これらのアドバイスって僕にとっては割としっくりくるんですよ。実際できる限り実践し始めているつもりだし。しかし、これが世の中の多くの人の役に立つアドバイスかと言われれば僕は疑問を感じます。

周りの人を見れば、同じことをして普通に暮らしている人が大勢いますよね。普通の会社に勤めて、普通に家庭を持って、普通に家と車を持っている人。こんな人たちって、仕事が楽しくなくても、満員電車に乗ってでも毎日出勤して、それでも精神的に病むこともなくほとんど安泰に暮らしていけてますよね。こんな人たちは、人と違うところがなくても、夢中になれるほどの事がなくても、好きなことが仕事じゃなくても全然問題なく生きているように見えます。

ここが、現代のアドバイスに潜む外向型への罠じゃないかと思うんです。世界を変えるほどの偉業を成した人っていうのは、つまるところ「内向的」な側面を持った少数派のタイプがほとんどです。その人達が成功の秘訣を大勢を占める「外向型」に語っても、そもそも成功の形が違ってくるわけなんです。

内向型の成功は、「自分にしかできないことを成し遂げたとき」。

ジョブスでもエジソンでもアインシュタインでもそうですよね。一方外向型にとっての成功はほとんど、地位や財産、人脈など、周囲と比べて社会的に優位なものを手に入れることです。例えば官僚になる、医者になる、公務員になるなど。成功の方法どころか、思い描く成功の形すら違うので、これらのアドバイスが役に立つとはあまり思えないんです。

外向型には外向型の生き方がある

以上のことから、自分らしい生き方をするために気をつけるべきは、内向型だけではありません。

例えば外向型が無理に偉人達の生き方を取り入れたとします。学祭などの学校行事には積極的に参加せず、受験勉強より好きなことを優先して過ごす。社会に出たあとは、無駄な飲み会には参加せず、人付き合いも少数としかしない。行動を起こす時にはトラブルが起こる可能性をいっぱいあげて十分な対策をする。

こういった生き方をしていると、外向型の強みである社交性や空気を読む力、多少の理不尽にも耐えられる力などが活かされることがありません。むしろ、周りと歩調を合わせて、現状を維持できる能力が最大の強みと言えて、個人が抜きん出るにしても、組織の中で1番になるとか、周りよりも優れているとかそれくらいでいいんです。

普通というのはとてつもない才能

人間なら誰しもが一度は、人とは違うことをして成功をおさめてみたいと思うかもしれません。

しかしながら、内向型まっしぐらであり、普通にサラリーマンや公務員として働くことの難しい僕にとっては、「普通である」というのは喉から手が出るほど欲しい才能に見えます。今でこそ、自分なりの生活を手に入れるためにスローライフを目指して暮らしていますが、昔はそうではありませんでした。「周りもできるんだから僕もできるはず」と思って、毎日残業続きで休みも少ない現場で働いていたときもありました。

しかし残業のキツさと、古い体制で無駄ばかりある事務内容には耐えきれず、ついには鬱状態になって引退した過去があります。それを思い出すたび、普通の人は残業にも古い体制にも、また人間関係にストレスを感じても病気にならずやっていけるというのを羨ましく思いました。正直そうなりたいかと聞かれると微妙ですが…。

だから世の中の多くの人には、あまりビジネス界の大物の意見に囚われることなく、自分にとって役に立ちそうな知識だけ吸収して欲しいと思うわけです。外向型は周りの意見をよく聞いて参考にする面もありますからね…余計に心配です。仕事術の本などを読んで「今の会社の体制は変えなきゃダメだ!」とか無理に考える必要はありません。もちろんそれが楽しさに繋がるならOKですが。その役割は、違う才能を持った人がやってくれます。

外向型が唯一気をつけたいこと

ここまでで、多数派の外向型は、立派に社会を普通に保つ才能があると語りました。

外向型が無理に成功者を真似る必要はありませんが、一つだけ気をつけたい部分があります。それはマスコミの偏向報道や、常識の中にある間違い、いわゆるウソに騙されないことです。外向型は周囲の意見をよく聞いて、割と素直に受け取る傾向があると思います。

「専門家が言ってたから正しい」

「みんなが言ってるから正しい」

「マスコミが言ってるから正しい」

などの思い込みがあると、世の8割の国民は政府やマスコミなどに都合よく利用されてしまうわけです。例えば最近話題になった「国の借金が膨大にあるから返さなければいけない」なんて話はいい例かもしれません。実際の国の借金というのは、円建ての国債なのに、大臣にそう言われたら本当な気がしますよね。

しかし大部分の人は掘り下げて調べるようなことはしません。この辺は、情報化社会になって、動画サイトやネットからも多角的な意見が聞けるようになった現代のシステムを上手く使って乗り越えてもらいたいと思います。何事もまず自分で考えてみて、気になるなら調べて見る、というのがコツですね。

これは、興味を持ったら他のことそっちのけで走り出す内向型の得意分野なので少し難しいかもしれませんが。これさえやっておけば、世の中は勝手に良い方向に進んでいくと思います。新しい境地を開拓する役目は、すでに内向型が陰でやっていますから。以上、著者様の意向とはズレてしまうかもしれませんが、「内向型の生き方戦略」を外向型にもオススメしたい理由でした。