コーヒー豆のオーブン焙煎上級編【SlowLifeRyoのおウチ焙煎】
- 2021.02.15
- コーヒー
僕はまだ珈琲焙煎の専用器具を持っていないので、オーブントースターを使った焙煎です。ですがコツがわかってくると、これでも意外と本格的な焙煎プロセスを踏むことができるようになってきます。日々焙煎を勉強しながらオーブンの扱いを経験することで深まった、オーブン焙煎手法上級編を紹介します。
オーブントースターと焙煎の予備知識
トースターの温度管理はヒーターのON、OFF
ONの時は豆の表面温度が上がる、OFFでは表面温度が上がらない
まずオーブントースターというのは大抵の場合、温度設定はありますが、ヒーターのON、OFFで温度を管理する仕組みにないっています。つまり熱の加え方はガス火などと違って一定ではなく、加熱と保温を繰り返していることになります。一定温度に達するとヒーターがOFFになり、そこからON、OFFを繰り返して温度を保ちます。そして豆の焙煎が進むのは、ほとんどONの時だけです。なので焙煎を進めたい段階であまりオーブンの温度設定が低いと、焙煎に時間がかかりすぎて味と香りが弱くなってしまうので注意が必要です。以前は170℃設定で最初から最後まで焙煎してみたりもしましたが、200gで30分以上かかってしまいました(汗)。今回の焙煎もこの辺りを意識しながら説明します。
室温が豆の温度上昇に与える影響
庫内温度は一定でも豆に与える熱量は違う
オーブンの温度設定が毎回同じでも、日によって変わってくる条件があります。それが焙煎をする部屋の「室温」です。もっと言えば季節による気温の違いでしょうか。オーブン本体は部屋の空気と触れ合っているので、室温が低いと熱量(カロリー)が部屋に逃げてしまいます。同じ温度設定でも豆に与える熱量が変化するので、仕上がりのバラつきを減らす為には温度設定を変えてあげる必要が出てきます。カンタンに言えば、夏は温度設定低め、冬は温度設定高めに設定してあげると良いです。
2段階焙煎で実際の焙煎プロファイルを再現
今回紹介する方法では、2段階の焙煎プロセスに分けて進めていきます。これによって、実際のコーヒー豆焙煎のプロファイルに近づけて、よりクオリティの高い焙煎を実現できるようになりました。
前半の低温焙煎で豆の繊維をほぐす
ゆっくり水分と青臭さを抜きつつ、豆を柔らかくする
まずは第1段階、140℃から160℃くらいの低温で焙煎します。ごく低温でゆっくり熱を加えるこのプロセスでは、以下のような効果を狙っていきます。
- 豆の中の余分な水分を抜く
- 青臭さを出来る限りなくす
- 熱を加えて豆を柔らかくする
まず、豆の水分をこの段階でなるべく抜いてあげます。すると本格的に焙煎するときに焙煎による化学反応がよく進みます。これは野菜炒めをするときもそうなのですが、野菜の水分が抜けてくると焼きが進んでくる(下手すると焦げる)のと同じ原理になります。この段階でも焙煎は少しずつ進むのですが、低温でじっくり熱を加える間に青臭い感じが抜けてきて、徐々に香ばしい香りに変化していきます。
ここでしっかり青臭さを抜いてあげると、出来上がりのときに浅煎りでも青臭さが残らず非常にえぐみの少ないコーヒーに仕上がります。そしてあと1つの目的、熱を加えて豆の組織をほぐし、膨らみやすい状態にしてあげます。そうすることで、焙煎後半でよく膨らんで、中に残っている水分も効率よく抜けてくれます。
化学反応を抑えて健康成分を多く残す
この段階で意識しているのは、化学反応を急に進めないことです。最初から高温でやってしまうと、表面の化学反応はよく進んでも、中まで火が通らないので青臭さが残ってしまいます。そしてもうひとつ、僕は「健康成分がよく残っているコーヒー」作りを目指していて、そのためにこの段階で加熱しすぎないことを意識しています。
コーヒーの健康成分の代表はクロロゲン酸、ポリフェノールの一種で、抗酸化、抗炎症作用があると言われています。この成分は160℃あたりから化学反応が進んで、コーヒー酸とキナ酸に分解が進み、珈琲の酸味の元になります。分解後のキナ酸も抗炎症作用があると言われていますが、なるべくクロロゲン酸を摂取することで体にポジティブな影響を与えることを狙っていきます。これらのことも同時に踏まえているのが前半の低温焙煎です。
後半の高温焙煎で好みの焙煎度合いへ
第1段階でゆっくり火を通したら第2段階、ここからは高温で焙煎を進めて好みの焙煎度合いに仕上げていきます。
高温で素早く化学反応を進める
ここからは190℃から210℃ほどの高温で加熱して、一気に化学反応を促していきます。コーヒー豆の焙煎による化学反応は料理と似ています。
- メイラード反応
- カラメル化
- 炭化
メイラード反応は、タンパク質(アミノ酸)に熱が通ると旨味が出てくる現象です。野菜炒めをすると野菜の旨味が出てくるアレです。カラメル化は糖分の変化、砂糖が香ばしくなって苦味や独特の旨味が出てくるものです。料理ではカラメリゼという手法で、お菓子作りなどによく使います(プリンとかプリンとかプリンとか)。
深煎りのコーヒーになってくると、炭化も進みます。炭化は有機物の分解が進んで炭素が残る状態で苦味の元になります。料理で言うと焦げの部分にあたりますが、失敗したときにもよく現れます(笑)。実際のコーヒー豆焙煎ではメイラード反応とカラメル化で旨味、甘味、酸味が出てきて、深煎りになるほど炭化が進んで苦味が出てきます。
オーブン焙煎の手順
以上を踏まえて、僕が今実際にやっている焙煎手順を紹介します。
150℃で1段階目の焙煎(予熱あり)
この段階ではクロロゲン酸の分解が進まないよう、150℃予熱後で10分前後加熱(ただし、真冬は時間がかかるので、160℃設定、真夏はまだ試していないが、140℃でも良いかも)。ヒーターがON、OFFを繰り返すので、OFFになるたびに、放射温度計で豆の表面温度を計る。豆の表面温度が150℃ほどになったらオーブンを止めて、1分ほどドアを閉めたまま待機。
200℃で2段階目の焙煎
ここからは焙煎がよく進むので、様子を見ながら焙煎する。オーブンを200℃に設定して5分設定で始める(ただし、真冬は210℃くらいでも良い、真夏はもっと低くても良いかも)。庫内温度150℃から200℃に達するまではヒーターがONになり続けるので、ここでかなり焙煎が進み1ハゼの始まりまで行くことが多い。その後はヒーターOFFの時は焙煎が進まずONのときにまた進む。
この間好みの焙煎度合いになるまで注意深く観察。僕はミディアムローストあたりで止める。1ハゼが活発になった後落ち着いてきたらオーブンを止める。中まで火を通したい時はオーブンを止めた後ドアを閉めたまま少し置いておくと良い。
ヒーターのON、OFFに注意する
2段階目の焙煎で理想的なのは、1ハゼが活発かしてきたあたりでヒーターが一度OFFになること。そのために、温度設定をツマミで変えられるオーブンなら、途中で温度設定を変えて調節しても良い。例えば、200℃設定で1ハゼが活発に進む前にヒーターがOFFになったら、210℃に変えるとまたヒーターがONになる。また、1ハゼが進んできたときに、まだヒーターがONだったら、設定温度を190℃にしてOFFになるようにするなど。
焙煎終了時の重さもチェック
最初に生豆のグラム数を測っておいて、焙煎終了後もグラム数を計る。終了後のグラム÷生豆のグラム数 で、比率を出す。僕は比率が0.87くらいになると、自分の好みの焙煎に仕上がっていることが多い。好みの焙煎度合より比率が高い時は、追加で焙煎しても良い。あくまで1つの基準として用いてもらい、最終的には味で判断。
終わり
以上が僕の実際の焙煎レシピでした。
まだまだ今後も研究を重ねて変化していくとは思いますが、2段階焙煎によってだいぶ自分の目指す味というものに近づいてきた印象です。本格焙煎がしたくて、ずっとガス火で手軽な焙煎器を探している間に、オーブン焙煎が結構洗練されてきてしまいました(笑)。でも考えようによっては、大切なのは本格的な器具を使うかどうかより、本格的な味を作れるかどうかなのかもしれません。いつか自分に合う焙煎器を探し当てることを夢見ていますが、今後もオーブン焙煎は研究を続けていこうと思います。
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